酒と豊穣の神・バッカスに仕える巫女、HALがお届けするお酒にまつわる物語
 
 

    時は春、日は朝[あした]、朝は七時、

    片岡に露みちて、揚雲雀なのりいで、

    蝸牛枝に這ひ、神、そらに知ろしめす。

    すべて世は事も無し。

 ロバート・ブラウニング『春の朝』(上田 敏訳)です。単純で、平明で、健康な世界。この上なく新鮮な情景は、暗く澱んだ日常に澄んだ光を投げかけ、我々の営むべき生活を示唆しているのです。

 今月はポルトガルワイン「ヴィーニョ・ヴェルデ」のご紹介です。“緑のワイン”と呼ばれ親しまれています。

 日本へ最初にワインをもたらした国、ポルトガル。スペインと国境を接し、国土は日本の約4分の1、北海道と同程度の面積です。世界に誇る三大酒精強化ワインのうちポートワイン・マディラワインを擁し、その他にも個性豊かなワインが多数造られています。

 同国最北部、大西洋を臨む、ミーニョ川とドウロ川に挟まれた地域がヴィーニョ・ヴェルデの産地です。ヴェルデ=緑は“若い”の意も含んでおり、完熟一週間前の、文字通り若い葡萄を収穫します。赤白ともに軽く発泡し、特に白はうっすらと黄緑色で、春に萌え出た若葉を連想させます。

 マカオに旅行した際、初めてこのワインを知りました。1996年、中国に返還される前の、まだポルトガル領だった頃。カジノだけがやけに華々しく、その周辺の街並みは、まるで時間が止まったように殺伐としていました。17世紀の要塞を改装したホテル内のレストランで、マカオ・ソール(巨大な舌平目)のムニエルとともにいただきました。

赤白ともに美しいエチケット

赤白ともに美しいエチケット

飲み比べれば違いは歴然

飲み比べれば違いは歴然

  今回はキンタ・ダ・アヴェレーダ社の「カザル・ガルシア」と「アルヴァリーニョ」を飲みました。

 カザル・ガルシアは50カ国以上に輸出されており、別名、ポルトガルワインの親善大使と言われるほど、世界中で愛飲されています。青地に白のエチケットは、ミーニョ地方の伝統的な刺繍を表わしたものです。度数10.5度、清々しい香り、抑えた酸味と甘味。軽やかに駆けるような飲み口は、冷やすことでさらに加速度を増します。微発泡が拍車をかけ、飽きることなく何杯でも飲んでしまいます。

 アルヴァリーニョは、キンタ・ダ・アヴェレーダ社最上級のヴィーニョ・ヴェルデです。かぐわしく魅力的な白ワインを生むとされる葡萄、アルヴァリーニョ種を100%用いています。2004年、度数12.5度。熟れた果実と強い花の香り。甘さの裏側にあるスパイシーさ。上質な蜂蜜を溶かしたような濃厚さは、我々に飲む時と場所を選べと要求してきます。

 春から夏への移行期間、爽やかな緑のワインが最も美味しい季節です。溢れ出す生命力の勢いに圧倒され、むせかえる花の匂いに眩暈し、そして自らの身体もまた、自然の一部であることを実感するのです。

今回はこちらで購入しました → http://www.w-harimaya.co.jp/